日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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南極氷結湖より採取された緑藻クラミドモナスの光環境適応能力の解析
*高橋 新一郎Huner Norman P. A.皆川 純
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p. 580

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抄録
Chlamydomonas raudensis (UWO241)は,Lake Bonny(南極)より採取された単細胞緑藻である.南極ドライバレーに位置するLake Bonnyは塩湖であるため,UWO241株は耐低温性とともに耐塩性を有している.我々は、植物プランクトンの光合成機能に培地中のNaCl濃度が及ぼす影響を明らかにするために,耐塩性の低いChlamydomonas raudensis CCMP1619株,およびモデル緑藻であるChlamydomonas reinhardtiiを対照とし,UWO241株の光環境適応能力について調べた.UWO241株は淡水条件では,他の緑藻と同様,暗条件によるステート2誘導を示したが,生育環境に近い700mM NaCl条件下では暗条件においてもステート1に固定されたままであり,ステート遷移を示さなかった.その過程を詳しく調べてみると,NaClを添加直後は一時的にステート2に移行するが,その後ステート1に戻り固定されることがわかった.これらの結果より,培地中のNaCl濃度が,ステート遷移,更に光合成系の光環境適応様式に影響を与えると結論した.地球温暖化による極相においては,極地の氷の溶出に起因した周辺表層海水の塩濃度低下が予測されている.塩濃度変化が植物プランクトンの光環境適応能力に及ぼす影響について考察する.
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© 2006 日本植物生理学会
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