抄録
ラン藻は窒素含量が高く(C:N=5),その獲得と同化に多くのエネルギーを使っている.そのため窒素の過剰,欠乏や窒素源の変動に対する遺伝子発現の応答は,ラン藻の環境適応の中でも主要な位置を占めており,窒素の獲得や代謝に関与する数多くの遺伝子が転写制御因子NtcAによって窒素栄養条件に応答して制御されることが明らかにされている.さらに新規の窒素応答性の遺伝子を探索するために,我々はSynechococcus elongatus PCC7942と99.7%の相同性のあるSynechococcus elongatus PCC6301のDNAマイクロアレイを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行った.細胞をアンモニア培地で生育させ,硝酸を含む培地に移して20分後の遺伝子発現の変化を解析したところ,硝酸同化オペロン,シアナーゼオペロンやグルタミン合成酵素,アンモニア輸送体の遺伝子など既知の遺伝子群の発現上昇に加え,他にも多くの遺伝子の発現の誘導が観察された.さらに炭素代謝系の遺伝子群の多くが抑制された。これらの変化に対するNtcA遺伝子の寄与を調べた結果を合わせて報告する.