抄録
光ストレスや個体の成長による栄養利用の変化が葉の老化に与える影響を調べるために、生育温度(25℃:高温、15℃または10℃:低温)、生育光強度(100 μmol m-2 s-1:弱光、1000 μmol m-2 s-1:強光) 、栄養供給の有無を組み合わせた条件でミズナラを生育させ、葉の展開終了から100日後までの葉の老化過程における光合成活性等の変化を調べた。光合成活性は、栄養供給下でも低温で生育している個体では低く、栄養供給がない条件では、強光低温で低くなっていた。Fv/Fmは強光低温で低く、強光高温では栄養供給がないと栄養供給下よりも低くなる傾向が見られた。栄養供給がない条件では、光合成能力が低く光ストレスを受けやすくなっていると考えられる。キサントフィル量は、栄養供給下でも強光低温で多く、栄養供給がない条件では強光低温で葉の老化に伴って次第に大きく増加した。キサントフィルの脱エポキシ化の割合は、栄養供給の有無に関わらず、強光低温で葉の展開終了後高い値を保ち続けた。また、栄養供給がない条件では弱光で生育しているにもかかわらず、葉の老化に伴ってキサントフィルの脱エポキシ化の割合は徐々に増加し、葉の展開終了100日後には強光下の個体と同様な値を示した。栄養欠乏条件下ではもともと少ない葉の養分が老化に伴って回収され、さらにストレスを受けやすくなったのではないかと考えられる。