抄録
哺乳動物において、IAP (inhibitor of apoptosis protein) は、機能ドメインBIRをもち,カスパーゼと結合してその活性を阻害することによりアポトーシス抑制因子として機能する。BIRはアポトーシス抑制に必須であり,カスパーゼとの結合に関与する.これまでIAPの植物ホモログは同定されていないが,IAPを植物で異所発現させると感染シグナル誘導性プログラム細胞死が抑制されることから、植物にIAPの機能ホモログが存在する可能性が示唆される.そこで遠縁の相同遺伝子の検索に有効なHMMER法を用いて,BIRと類似の配列をコードするシロイヌナズナ遺伝子を探索したところ,BLD (BIR-like domain)をコードする2種の新奇IAPホモログAtILP1/2 (IAP-like proteins)を発見した.AtILPsのヒトホモログHsILP1は,ヒト培養細胞においてアポトーシス抑制活性を示した(Higashi et al., 2005)ことから,我々はAtILPsが植物のプログラム細胞死制御に関与する可能性の検証を試みている。本研究では、タバコ培養細胞BY-2を用いて感染シグナル(エリシター)誘導性プログラム細胞死(Kadota et al., 2004)におけるAtILPの機能を解析した結果について報告する。