抄録
植物細胞では分化全能性が知られているが、単細胞から効率良く固体再生するのは数種の植物に限られ、その全容は未解明である。ナタネ葉肉プロトプラストを培養すると肥大化し分裂・増殖せず、老化が進み死に至る。私たちは、肥大化したナタネ葉肉プロトプラストがアポトーシス様プログラム細胞死(PCD)を起こしていることを発見した(Watanabe et al., 2002)。
私たちはこのPCDと考えられる過程において、まず活性酸素種(ROS)・一酸化窒素(NO)のシグナルとしての関与に注目して解析を行った。過酸化水素はプロトプラスト単離酵素によって速やかに消去されたので、プロトプラスト単離時に細胞外に放出されるROSは過酸化脂質であることが示唆された。蛍光プローブを用いた細胞染色を行ったところ、過酸化水素とNOには細胞内での発生部位に顕著な違いがあり、過酸化水素の発生は葉緑体で観察され、一方、NOの発生は細胞質で観察された。また、暗下でプロトプラストを単離すると、細胞内における過酸化水素とNOの蛍光強度は明下に比べて共に低い傾向が見られた。核DNAの断片化を引き起こすエンドヌクレアーゼをアクティブゲル法で検出した。その活性はCa,Mg,Mnの存在下で活性化され、EDTA,Znの存在下では阻害された。