日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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アサの細胞死誘導メカニズムに関する研究
*田中 由美田浦 太志正山 征洋森元 聡
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p. 635

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抄録
アサはアサ科に属する一年生草本で、本植物の葉や未熟果穂を乾燥したものは大麻と称され、鎮痛・幻覚薬として使用されてきた。本研究ではアサの幻覚物質であるTHCAが細胞死を誘導することを明確にした。
アサの未熟葉や成熟葉を蛍光顕微鏡で観察すると、淡青色の蛍光を示す分泌腺が認められるが、老化により黄変した葉では、この蛍光物質が葉の組織内に拡散していることが判明した。極めて興味深いことに蛍光物質と老化組織の分布は良く一致することから、この蛍光物質がアサの老化に関与することが推定された。そこで、この分泌腺を分離し、その内容物の成分検索を行った結果、CBCA及びTHCAが確認された。アサの培養細胞を用いて、両化合物の活性を調べたところ、いずれも50 Mの濃度で、アポトーシス様の細胞死を誘導することが確認された。THCAやCBCAが誘導するアポトーシスは、ascorbic acidや各種caspase阻害剤によって全く阻害されないことから、過酸化水素やcaspase様プロテアーゼとは無関係に細胞死が誘導されると考えられた。
これらの結果は、THCA及びCBCAがアサにおいて細胞死の誘導因子として機能していることを示唆している。近年の研究により、植物の細胞死は、動物と同様caspase様プロテアーゼが関与することが報告されているが、両化合物は異なった経路で細胞死を誘導すると思われる。
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© 2006 日本植物生理学会
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