抄録
種子発芽は植物ホルモン・栄養条件・光・温度など様々な要因によって調節されている。演者らはシロイヌナズナを用いてアブシジン酸の発芽阻害が低下した突然変異体の単離と解析を行っている。ABA非感受性変異株として得られたchotto1 (cho1)変異体の種子は一次休眠が浅く、天然型(+)-S-ABAに対しabi4やabi5変異体よりも弱い耐性を示した。CHO1遺伝子はAP2転写因子をコードしており、種子登熟期および発芽期に強く発現していた。二重変異株を用いた解析およびCHO1の発現解析から、CHO1はABI4の下流で作用し、種子吸水時のCHO1の発現誘導にABI4が必要であることが明らかとなった。abi4はABA非感受性以外に高濃度の糖に対する応答性が低下している事が示されている。cho1もabi4と同様に高濃度の糖に対する応答性が低下していた。さらに、高濃度の硝酸は野生型の種子発芽を阻害するが、cho1は高濃度の硝酸に耐性を示した。Affymetrix社のATH1 GenomeArrayを用いた遺伝子発現解析から、cho1では高硝酸条件下での吸水時に代謝関連遺伝子群の発現誘導が野生型よりも早く起こることが示された。以上の結果からCHO1は栄養条件を感知して生長を抑制する因子であること、また、CHO1がそれら遺伝子群の発現を抑制することで高硝酸条件下での種子発芽を遅らせると予想された。