抄録
病原菌の感染などのストレスに応答して生体防御反応が誘導される際に、細胞増殖が抑制される現象が広く知られているが、その分子機構は不明な点が多い。植物の感染防御応答と細胞周期制御との関係を明らかにするため我々は、細胞周期を同調化させたタバコ培養細胞BY-2に病原菌由来のタンパク質性エリシターcryptogeinを処理して同調的にプログラム細胞死を誘導するモデル系を構築し、解析を進めて来た。その結果、細胞死や防御応答の誘導に先立ち細胞周期がG1とG2期で停止すること、細胞死の誘導や上流のシグナル伝達系は細胞周期の時期に依存して調節されていることが明らかとなった(Plant J. 40:131- (2004); Plant Cell Physiol. 46: 156- (2005)) 。しかし、細胞周期停止の分子機構や生体防御応答における意義は未解明である。そこで本研究では、細胞周期がG2期で停止する際の、さまざまな細胞周期制御因子の挙動を解析した。cryptogein処理により、A-type/B-type cyclinの発現、CDKBの蓄積及びCDK活性が顕著に抑制された。またOsCycB2;2-GFP融合タンパク質を過剰発現させたBY-2細胞を用いた可視化解析の結果、cryptogein処理により、プロテアソーム系を介したcyclinの分解が誘導される可能性が示唆された。