抄録
二次壁は主にセルロースとリグニンからなり一次壁の内側に形成されるが、限られた組織にのみ形成される。花茎や樹の木部領域で形成される二次壁は植物体を支えるのに必須であり、二次木部は木材を構成する。二次壁は他にも葯や果実鞘の内被層にも形成され各々の開裂に重要である。本研究では植物特異的転写因子に転写抑制ドメイン(SRDX)を融合させてキメラリプレッサーを発現させる網羅的な機能解析(CRES-T法)の過程で、NAC転写因子であるNST1のキメラリプレッサーを発現させると葯の開裂に支障をきたすことを見出した。組織化学的な検証の結果この原因は葯の内被細胞層において二次壁肥厚が欠損しているからであるとわかった。NST1と高い相同性を示すNST2のキメラリプレッサーを発現させても同様の結果が得られ、NST1とNST2の二重遺伝子破壊株も同様の表現形を示した。また、この表現形はNST1またはNST2を各自のプロモーターで発現させることで回復した。一方NST1またはNST2を35Sプロモーターで過剰発現させると、様々な部位で異所的な二次壁肥厚が観察された。また、NST1、NST2のプロモーターは葯だけでなく花茎の木部領域や果実鞘など二次壁肥厚が起きる部位で活性を持っていた。今大会ではもう一つのよく似た遺伝子NST3の機能解析も含め植物体の様々な部位における二次壁肥厚の制御機構について報告する。