抄録
道管を構成する管状要素の分化過程において、細胞壁は、二次細胞壁の肥厚、リグニン化、一次細胞壁の部分分解など、著しい構造変化を起こす。分化に伴う細胞壁の自己分解活性を調べてみると、ペクチンの分解活性が最も顕著であり、その活性は管状要素分化に伴って一過的に発現上昇した後、分化が完了していると思われる時期に再び上昇する二相性の変化を示した。そこで、我々は、分化に関連すると考えられるポリガラクツロナーゼ (PG) 遺伝子を探索する目的で、ヒャクニチソウより 3 種の PG 遺伝子 ZePG1-ZePG3 を単離してきた。発現解析の結果、ZePG1 は培養後期に高い発現レベルを維持するパターンを示すのに対し、ZePG2 および ZePG3 は、管状要素形態形成時 (培養後 60 時間目) に一過的な発現上昇が見られた。
そこで、タンパク質レベルでの解析を行った。抗 ZePG2 抗体を作製し、タンパク質レベルでの発現を見たところ、培養 48 時間目から 72 時間目で発現する 58 kDa のバンドに加え、60 時間目から蓄積の始まる 50 kDa のバンドが検出された。この 2 本のバンドは、時間の経過と共に量比が逆転しており、分化の進行に伴ってタンパク質のプロセシングが起きている可能性が示唆された。現在は ZePG2 の細胞内局在について解析を進めており、これらを併せて報告したい。