抄録
環境中における余剰タンパクを効率的に分解する補助剤として使用する目的で,界面活性剤抵抗性があり,基質特異性が低く,分解活性の高いプロテアーゼを植物中で探索することを計画した。緑葉をSDS-PAGE試料作成溶液で磨砕し,その遠心上清をSDS-PAGEで分析したときのペプチドバンド数が少ない植物を候補植物として選択した。試みた植物中で,最も少ないバンド数を示した植物はミズバショウ(Lysichiton camtschatcense)であった。
ミズバショウの可溶性画分に存在するBSA分解活性を持つ酵素をSDS-PAGE法で追跡した。活性を維持するためには,抽出液中に高濃度の還元剤を存在させることが必要であった。プロテアーゼ活性は0.1%SDSと0.5%メルカプトエタノール存在下で最大活性を示し,2%SDS存在下でも約40%の分解活性を維持していた。また,pH7.5をピークとする釣り鐘状のpHプロフィールを示した。TOSOH G3000SW カラムでゲル濾過すると,活性画分は低分子域に遅れて溶出された。この画分の比活性は12mgBSA/mg protein/minであった。SDS-PAGEゲルを2mm間隔に細分化する方法で得られた分子サイズは約28kDaと推定された。阻害剤の感受性から,このプロテアーゼはシステインエンドプロテアーゼであると結論された。このプロテアーゼは,秋に枯れるときに,大きな葉に含まれる多量のタンパクを素早く分解してアミノ酸の回収を容易にするために必要なのかも知れない。