抄録
植物における緑化や老化などの生育状態の変化には,タンパク質の合成と分解が起こることから,プロテアーゼの関与が示唆されている.これまでに,オオムギにおいて人工基質Suc-Leu-Leu-Val-Tyr-MCA分解活性を持つ酵素を確認した.その酵素は0.1%の濃度のラウリル硫酸ナトリウム(SDS)により活性が促進されるものであった.本公演ではこの酵素について精製と同定をさらに進めてきたので報告する.この酵素は,葉緑体の発達と分解と相関して活性が変動した.本研究では,この酵素についてDE52陰イオン交換体,Q sepharose FF陰イオン交換体,Hi Load Superdex 200 prep gradeゲルろ過カラム,Superdex 200ゲルろ過クロマトグラフィー,Native-PAGEを用いて精製を行った.その結果,精製段階が進むにしたがって至適SDS濃度が低下することがわかった.Superdex 200ゲルろ過クロマトグラフィーにより求めた分子量は約50 kであった.また,至適pHは中性付近であることが明らかになった.現在,本酵素の完全精製とアミノ酸シーケンスを進めるとともに,細胞内局在,各種プロテアーゼ阻害剤による阻害効果の検討,基質特異性など,生化学的性質の詳細について解析を進めている.