抄録
‘クサイライム’は、‘ラングプールライム’の赤橙色の果皮及び果肉が黄色に変化した品種である。この変異の原因を明らかにするため、果実のカロテノイドの含有量や成分組成を調べ、カロテノイド生合成における変化について解析した。フラベドのTotal carotenoidは差がみられなかったが、成分組成の変化では、‘クサイライム’において、phytoeneが‘ラングプールライム’の2倍以上に蓄積し、逆にβ-cryptoxanthin、all-trans-violaxanthin、9-cis-violaxanthinは大幅に少なかった。‘クサイライム’のフラベドでは、カロテノイド生合成経路の上流に位置するphytoeneより下流の生合成が抑えられたため、phytoeneが蓄積し、下流に位置するカロテノイド含有量が少なくなったと推測される。一方、‘クサイライム’の砂じょうでは、phytoeneの蓄積はみられず、Total carotenoidの量が大幅に少なかったことから、カロテノイド生合成量自体が少ないか、あるいは分解系が活性化していることが予想された。さらに、葉におけるカロテノイド含有量、及びカロテノイドから生合成されるABAの含有量の変化について調べ、報告する。