抄録
紫~青い色の花には芳香族アシル基により修飾されたデルフィニジン型のアントシアニンが含まれることが多い。中でもリンドウの花弁に含まれるゲンチオデルフィン(デルフィニジン 3-グルコシド 5,3'-ビス-カフェオイルグルコシド)などのポリアシル化デルフィニジンは、安定な青い色を呈する。吉田らはゲンチオデルフィンの安定な青さは2つのカフェオイル基とデルフィニジンのスタッキングに由来すること、3'位のカフェオイル基が5位のカフェオイル基よりも安定化、青色化に寄与していることを報告している(Yoshida et al., 2000)。アントシアニンの5位にアシル基を転移するアシル基転移酵素および3位のアシル基転移酵素の遺伝子は、リンドウはじめ他の植物からも得られている。しかし、アントシアニンの3'位などB環のアシル化を行う酵素又はこれをコードする遺伝子が報告された例はない。我々はリンドウから得られたアントシアニン5位芳香族アシル基転移酵素(Fujiwara et al., 1999)の酵素学的性質を詳細に調べることにより、本酵素が5位の糖だけでなく3'位の糖にも芳香族アシル基を転移する活性を有することを明らかにした。また、5位の糖のアシル化は3'位のアシル化に先行することが示唆された。これにより分子生物学的手法を用いてポリアシル化アントシアニンをバラやカーネーションで生産させ、花色をより安定した青色にするための分子ツールが揃った。