抄録
植物は、外部からの栄養獲得が閉ざされた際に、自らの構成成分の一部を分解して必要な代謝物を獲得する。この分解には自食作用を含む様々なメカニズムが関与していると考えられる。タバコ培養細胞をショ糖飢餓条件下に置くとタンパク質やリン脂質の正味の分解が誘導される。タンパク質分解は、自食作用を阻害する3-メチルアデニン(3-MA)によって阻害されるので、主に自食作用がショ糖飢餓条件下におけるタンパク質分解に寄与していると考えられる。それに対して、リン脂質分解は3-MAに影響されないので、自食作用はリン脂質分解にほとんど寄与していないと考えられた。
本研究では、リン脂質分解と自食作用との関連をさらに詳しく調べた。ショ糖飢餓条件下に置かれたタバコ培養細胞からリン脂質関連物質を抽出し、薄層クロマトグラフィーで解析した。その過程で、ショ糖飢餓に応答してダイナミックに減少するホスファチジルコリンとは反対に、量が増加するスポットを見出した。3-MAはホスファチジルコリンの減少に影響を与えなかったが、これらのスポットは3-MAを培地に加えることで、増加が阻害された。このことは、リン脂質分解の初発段階は自食作用と異なるメカニズムに因るものであるが、リン脂質分解中間体のさらなる分解には自食作用が関わっていることを示唆している。現在、これらの未知のスポットの同定および局在について解析を進めている。