抄録
アクアポリンファミリータンパク質分子の立体構造はアクアポリンとグリセロポリンを含め約10の分子種について調べられていて、基質輸送は分子の中心を貫く孔を通して行われることと、その孔の内部構造と基質の関係についても詳細な報告がある。しかし、タンパク質の外側に向いた部位にも活性調節に関する部分が示唆されていて、基質が通る孔とタンパク質の骨格構造の関係を明らかにすることは重要なことである。
大腸菌のグリセロポリン分子は基質との共存条件の異なる立体構造がデータベースに登録されている。そこで、本研究ではデータベースからグリセロポリンの立体構造を取得し、タンパク質の骨格構造が基質の共存によってどのように異なるのかを計算機上で詳細に検討した。
結果、グリセロールの有無の違いは膜貫通へリックスの傾きにほとんど影響がなく、1度以下の違いであることが分かった。しかし、一部の膜貫通へリックスのひねり角は条件によって変動がみられた。特に第6膜貫通へリックスは外側のグリセロールの有無によってひねり角が変化し、穴の中のグリセロールの有無によってN末側にも構造変化を起こしていることが分かった。