日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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青色光センサー蛋白質PixDの光反応機構:フラビン近傍チロシンを含む水素結合ネットワークの変化
*高橋 亮太鈴木 博行岡島 公司中村 寛夫池内 昌彦野口 巧
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p. 737

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抄録
好熱性ラン藻Thermosynechococcus elongatus由来のフラビン結合蛋白質PixDは、走光性に関与する青色光受容BLUF蛋白質である。最近明らかにされたPixDのX線結晶構造によると、光誘起反応において大きな構造変化を示すことが知られているフラビンのC4=O基の近傍には、Gln50及びTyr8が存在し、C4=Oへの水素結合ネットワークを形成している。しかし、その水素結合ネットワークの光反応への関与やPixDの機能における役割は不明である。そこで本研究では、Tyr側鎖を選択的に同位体置換したPixDを用い、その光誘起フーリエ変換赤外(FTIR)差スペクトルを測定することによって、Tyr8の反応機構への関与について調べた。
Tyrの水酸基が結合する4位の炭素を13C同位体置換した[4-13C-Tyr]PixDについて、光誘起FTIR差スペクトルを測定した。非置換PixDのスペクトルとの二重差スペクトルには、1275−1225cm-1の領域に、チロシン側鎖のC-O伸縮及びCOH変角振動由来のピークが観測され、Tyr8の構造がフラビンの光反応により変化することが示された。これらのピークの位置及び強度を、理論計算によって解析した結果、Tyr8の水酸基はGln50のC=O基と水素結合を形成しており、フラビンの光反応によってその水素結合強度が増すことが示された。このことは、フラビンのC4=OからGln50、Tyr8へと続く水素結合ネットワークが、PixDのシグナル伝達機構において重要な役割を果たしていることを示唆している。
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© 2006 日本植物生理学会
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