抄録
シアノバクテリアは光環境の変化に応じて大きく遺伝子発現パターンを変化させることが知られる。これには光刺激に応じて転写を制御する何らかの機構が関与していることが示唆される。我々はシアノバクテリアの遺伝子発現に光応答性を付与する因子を特定するため、発現レベルが明暗変化に応じて変動する転写因子の遺伝子破壊株においてDNAマイクロアレイ解析を行い、遺伝子発現の光応答性に影響を与えるものを探索した。その結果slr0701(phoU-homolog)およびsll1594 (ndhR)の破壊により一群の遺伝子発現の光応答性が減弱されることが分かった。slr0701の発現は暗明移行により低下するが、その破壊によりrbcオペロン、リボソームタンパク質遺伝子、rpoA等を含む57遺伝子の暗明移行に伴う発現誘導の割合が低下した。その一方dnaJを含む10遺伝子の発現抑制の割合が低下した。sll1594の発現は暗明移行により増加するが、その破壊によりリボソームタンパク質遺伝子を含む4遺伝子の暗明移行に伴う発現誘導の割合が低下した。そしてtrxM, nblAを含む22遺伝子の発現抑制の割合が低下した。これより、slr0701産物およびSll1594産物は主として暗所から明所へ移行した際の遺伝子発現の促進因子および抑制因子として働いていることが示唆された。