抄録
植物の感染防御応答の初期過程において、膜電位変化に伴う細胞外からのCa2+流入がシグナル伝達に重要な役割を果たすと考えられているが、Ca2+動員機構やその分子的実体は、不明な部分が多い。我々は、イネから電位依存性Ca2+チャネル候補遺伝子OsTPC1を単離し(Plant Cell Physiol. 2005 45: 693-)、過剰発現株や機能破壊株を用いた解析から、この因子が植物の感染防御応答過程において重要な役割を果たしていることを報告した(Plant J. 2005 42: 798-)。本研究では、感染防御応答シグナル伝達系におけるOsTPC1の機能を分子レベルで解明するため、oligo DNA microarray法を用いて、野生型株とOstpc1機能破壊株におけるタンパク質性エリシターにより誘導される遺伝子発現を網羅的に比較解析した。その結果、Ostpc1機能破壊株において、種々の防御関連遺伝子の発現レベルが変化していることが明らかとなり、OsTPC1を介したCa2+動員の制御が、防御関連遺伝子の発現などの生体防御シグナル伝達系において重要な役割を果たすと考えられる。