老年歯科医学
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原著
老人介護保健施設における口腔衛生管理の長期的効果
―Oral Health Assessment Toolスコアでみた変化―
荒井 昌海松尾 浩一郎田口 知実森田 英明
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2020 年 35 巻 1 号 p. 52-60

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抄録

 目的:今回われわれは,老人介護保健施設において,介護者への口腔ケア教育を含めた口腔衛生管理によって入所者の口腔環境が改善,維持されるか,日本語版Oral Health Assessment Tool(OHAT)を使用して,後ろ向きに検討した。

 方法:2016年9月から2年間,某歯科医院による訪問歯科診療への同意が得られた介護保険施設の入居者と介護者を対象とした。1カ月ごとにOHATを用いて対象者の口腔環境が評価され,評価に基づいた口腔機能管理シートが作成された。この管理シートを基に,介護者への口腔ケアの教育と歯科衛生士による専門的口腔衛生処置が実施された。2年間を通じて入所していた患者を通期群とし,介入の途中で入所または退所した者を含めた全患者を全体群とした。OHATスコアの半年ごとの変化を検討した。

 結果:通期群42名と全体群96名のOHATスコアは,初回評価時では,通期群で中央値(四分位範囲)が3(1~4),全体群では3(1~5)であったが,半年後には,通期群で1(0~3),全体群でも2(0.25~3)と有意に低下し,2年後には通期群で1(0~2),全体群でも1(0~3)と低値が維持された。

 結論:本結果より,入所者が変化していく介護保険施設で,介護者への口腔ケア教育を含めた口腔衛生管理により,入所者の口腔環境を改善させ,継続して維持できることが示唆された。

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© 2020 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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