抄録
アッケシソウ(Salicornia europaea L.)は、アカザ科に属する一年生草本で、塩湿地に生息する最も強力な耐塩性を有する塩生植物の1つである。本種は減少傾向にあり、その耐塩性機構については僅かな報告があるのみである。以前、本研究ではアッケシソウの耐塩性機構を遺伝子レベルで解析することを目的として、アッケシソウから抽出したmRNAを基にλZAPIIを用いてcDNAライブラリーを構築し、大腸菌を用いた機能スクリーニング法により、アッケシソウの耐塩性に関与する遺伝子の単離を試みた。その結果、シロイヌナズナのfasciclin-like arabinogalactan protein (FLA)とアミノ酸レベルで58%の相同性のある427アミノ酸からなるタンパク質をコードするcDNAが導入された大腸菌に耐塩性の向上が認められた。一般にFLAは、植物の細胞膜上や細胞壁に存在する糖タンパク質の一種であり、耐塩性機構との関連性は不明である。そこで本研究では、アッケシソウ由来のFLA (SeFLA) を過剰発現した酵母やタバコを作出し、それらの耐塩性に関わるキャラクタリゼーションを試みた。本研究の一部はNEDOからの平成15年度産業技術研究助成事業の助成で行われた。