抄録
植物の形態形成にとって、分裂組織とそこから新生される器官の細胞運命を分けることは非常に重要であり、このために、両者を隔てる境界部の確立が行われる。NAC型転写因子であるシロイヌナズナCUP-SHAPED COTYLEDON1 (CUC1)は、境界部の形成に重要な役割をもつ。CUC1の下流で機能する遺伝子の探索が行われ、転写制御を受ける候補遺伝子が同定された。そのうちのひとつ、LIGHT-DEPENDENT SHORT HYPOCOTYLS 4 (LSH4)は、植物で保存されたALOG遺伝子ファミリーに属し、核局在タンパク質をコードする。LSH4は胚、芽生え、葉や花などの器官の境界部で発現していた。ステロイドホルモンの誘導系を用いた実験から、LSH4はCUC1によって直接転写制御を受けることが示唆された。LSH4の過剰発現株では、茎頂メリステムの拡大と葉原基の成長の抑制が見られ、花ではがく片上部に裂け目が入ったり、異所的な花と花器官が形成される等の異常が見られた。以上のことから、LSH4 はCUC1に直接転写されて境界部で発現し、細胞の増殖と分化を調節していることが示唆された。