抄録
イネ科植物は、三価鉄のキレーターであるムギネ酸類を分泌し、土壌中で不溶態鉄と錯体を形成することにより可溶化して吸収する。この「三価鉄ムギネ酸類」錯体を吸収するトランスポーターZmYS1の遺伝子が、トウモロコシの変異体の研究によって単離された。イネゲノム中には、18個のZmYS1-like遺伝子、OsYSL遺伝子が存在する。
本研究では、これらのうち2つのOsYSL遺伝子が根からの鉄吸収、植物体内の鉄移行に関わることを示す。OsYSL15は、「三価鉄―デオキシムギネ酸」錯体を輸送基質とし、プロモーターGUS実験により根の表皮細胞で発現する事が明らかになった。鉄欠乏の根で強く誘導されるOsYSL15は、根での鉄吸収に主要な役割を果たすと考えられる。
OsYSL2は鉄欠乏の地上部で発現することを新潟大会で報告した。さらに、OsYSL2は種子登熟過程で発現することが明らかとなっており、種子中へ鉄を輸送するために重要な役割を果たす可能性がある。現在、RNAi法によりOsYSL2遺伝子の発現抑制を試みており、遺伝子抑制による種子への鉄の移行を解析中である。