抄録
カルモジュリン (CaM) は真核生物に普遍的なCa2+結合タンパク質であり、Ca2+依存的に幅広い標的タンパク質の働きを制御する。我々は新規なCaM結合タンパク質として、タバコのMAPキナーゼ脱リン酸化酵素・NtMKP1を同定した。In vitro transcription/translationにより作製したNtMKP1は、タバコのストレス応答性MAPキナーゼであるSIPKを脱リン酸化し不活性化した。欠失およびアミノ酸置換を用いた解析より、NtMKP1がSIPKと結合し不活性化するには、NtMKP1のN末端非触媒領域に存在するLys41とArg43が重要であり、CaM結合ドメインおよびC末端ドメインは必須でないことが明らかになった。さらに、NtMKP1の人工基質を脱リン酸化する活性はSIPKの添加により顕著に活性化されたが、CaMの添加によっては顕著な影響を受けなかった。Nicotiana benthamianaを用いた一過的発現系より、in vivoにおいてもNtMKP1がSIPKを不活性化するにはNtMKP1のN末端非触媒領域に存在するLys41とArg43が重要であり、CaMの結合は必須でないことが明らかになった。以上の結果より、NtMKP1の活性は生理的基質であるSIPKとの結合により制御されており、CaMの結合には他の効果があると考えられる。