日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナにおける長距離花成シグナル
*阿部 光知大門 靖史山本 純子山口 礼子池田 陽子野田口 理孝荒木 崇
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p. S006

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抄録
光周期による花成制御過程は、これまでの生理学的研究の成果から、葉でおこる光周期の感受から花成刺激の産生までの過程と、茎頂分裂組織でおこる花芽分化誘導の過程の二つに大別される。この二つの過程は、遠く離れた組織でおこるイベントであることから、二つの過程を結びつける物質として“長距離花成シグナル(フロリゲン)”が想定されてきた。しかしながら、その実体は謎のまま、長きにわたり取り残されてきた感がある。シロイヌナズナにおいて様々な花成制御経路の統合に関わるFLOWERING LOCUS T (FT)遺伝子は、強力な花成促進因子である。これまでの研究からFT遺伝子の転写は、花成誘導条件である長日条件下において子葉ならびに本葉で誘導されることが知られている。われわれは、新たにFTの機能的パートナーであるFD遺伝子を同定し、FTタンパク質とFDタンパク質が茎頂分裂組織で相互作用することによって、花芽分裂組織遺伝子群の転写が促進され、花芽分化が誘導されることを見いだした。また、接木実験によって、FT遺伝子による花成促進効果が接木面を介して伝達されうることも示した。これらの結果は、FT遺伝子産物が長距離花成シグナルの実体もしくは重要な一因子であることを示唆するものであると考えている。本講演では、FT遺伝子の解析を通して長距離花成シグナルに関する現時点での理解と今後の展望について議論する予定である。
Abe et al. (2005) Science 309: 1052-1056.
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© 2006 日本植物生理学会
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