抄録
赤かび病はコムギやオオムギなどのムギ類における最重要病害の1つであり、収量を低下させるだけでなく、人畜に有害なデオキシニバレノールなどのかび毒を生じさせる。これまでに、赤かび病に対する免疫的な抵抗性を示す遺伝子は報告されておらず、赤かび病による被害を軽減するためには量的抵抗性を強化した品種の育成が重要であると考えられている。武田・部田(1989)は、大量の供試材料を制御環境下で検定できる「切り穂検定法」を開発し、オオムギ遺伝資源4,957系統の中から高度の抵抗性を示す23系統を選抜した。武田・呉(1996)は抵抗性程度の異なる6系統間でダイアレル交配(総当たり交配)を行い、赤かび病抵抗性には効果の小さな複数の遺伝子座(QTL)が関与していると推定した。そこで、抵抗性QTLの座乗位置を明らかにするために、ダイアレル交配から複数の組換え自殖(RI)集団を育成し、連鎖地図を構築して赤かび病抵抗性のQTLを検出した。また、各RI系統の条性、穂密度などの形態形質および出穂期などの生理形質と赤かび病抵抗性の関係を調査した。解析の結果、条性や開閉花性の遺伝子座近傍にQTLが見出され、これらの形態形質が抵抗性に影響を与えている可能性が示唆された。現在、抵抗性と形態形質の関係を明らかにするために、検出したQTLを持つ準同質遺伝子座系統を育成中である。