抄録
乾燥、塩ストレス、低温などの水関連ストレスに対してオオムギはイネ科作物の中では高い耐性をもつ。その機構を分子レベルで理解するために、私たちはオオムギの水チャネル・アクアポリンおよび耐塩性に関連する遺伝子の解析を進めてきた。
アクアポリンは生体膜上に存在して水輸送機を担う膜タンパクである。私たちはオオムギがもつ11種類の原形質膜型アクアポリン(PIP)について解析を進めた。塩ストレス(NaCl)や浸透ストレス(マニトール)環境下での発現を解析し、一部のPIPについては定量的な解析も行った。主要なPIPであるHvPIP2;1については抗体を作成してタンパクレベルでの発現解析も行った。またアフリカツメガエル卵母細胞を用いた機能発現系を用いてHvPIP2;1タンパクの水輸送活性を確認した。HvPIP2;1は塩ストレスで発現が抑制されるが、オオムギの他のPIPの中には常に低レベルの恒常的発現を示すものもあった。形質転換イネの実験から、耐塩性機構にHvPIP2;1が関わっていることが示された。一方、塩ストレス抵抗性オオムギ根cDNAをEST解析して冗長性のないESTカタログを構築した。対象としてオオムギBarke根cDNAライブラリーを同様に解析して比較したところ、塩ストレス抵抗性オオムギで特異的な遺伝子が高発現し、これら遺伝子の多くが機能未同定遺伝子であることが明らかとなった。