日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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植物プランクトンにおける光環境適応
岩井 優和高橋 新一郎*皆川 純
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p. S014

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抄録
植物プランクトンは、特に海洋において全CO2固定量の約半分をまかなうなど、その一次生産は地球温暖化の進行に重大な影響を及ぼす.また逆に地球温暖化の進行がその生理生態に及ぼす影響も大きいと考えられる.我々は,緑藻の光合成系の光環境適応機構をモデルに,環境変動が植物プランクトンの生理機能に与える影響の研究を進めている.植物プランクトンは,高等植物と同等の光合成装置を有し,また過剰な光環境にはNPQの発動によって対応するなど,基本的な仕組みはほとんど違わない.しかし,Chlamydomonas reinhardtiiの蛍光挙動の解析から,CO2が不足する際にはステート遷移による比較的遅いNPQが誘導され,強光下では,qEクエンチングによる速いNPQが誘導されることが明らかとなるなど、NPQのほとんどをステート遷移に頼らない高等植物とは大きく異なることがわかってきた.一方,南極ドライバレーの塩湖にて単離されたChlamydomonasでは,生育培地中にNaClが高濃度存在すると,ステート遷移が抑制されることがわかった.最近明らかになった,ステート遷移で単量体LHCIIが果たしているユニークな役割も含め,植物プランクトンにおける光環境適応能力についての最新の知見を報告する.(本研究の一部は,地球環境研究総合推進費によるものである).
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© 2006 日本植物生理学会
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