抄録
光化学系II(PSII)の結晶構造はこれまで演者らを含めて3つのグループから報告され、それらによりPSIIサブユニットの全体構造やほぼすべての電子伝達体の相対配置などが明らかになり、PSII機能の新しい側面が議論できるようになった。しかし、これまで報告されたPSII結晶構造の分解能は3.5A前後であり、PSII構成サブユニットの全アミノ酸残基の側鎖や水分解を直接触媒しているMnクラスターの詳細な構造を解明するにはいたっていない。演者らは好熱性ラン色細菌Thermosynechococcus vulcanus由来PSII精製方法・結晶化条件・結晶の低温凍結条件等を改良することにより分解能3.3Aの回折データを収集し、これを用いてすでに報告したPSIIの構造モデルを改良している。本講演では、改良されたPSIIの構造に基づき、PSII反応中心における初期電化分離とそれに伴う電子伝達反応、CP47, CP43から反応中心へのエネルギー移動、βカロチンを含めた二次電子伝達反応、水分解・酸素発生反応を直接触媒しているMnクラスター等の機能について議論し、PSII結晶構造解析の現状と課題について展望する。