抄録
CRES-T法は、機能の重複した転写因子群に対しても優位に抑制効果を発揮し、高次倍数体などにおける効率的な遺伝子サイレンシングを可能にする画期的な転写因子抑制技法として期待されている。私たちは、この技法を用いた花きの形質改良を通じて、植物の簡便かつ効率的な新規形質導入・スクリーニング技法として確立することを目的に、本年度より「花きCRES-Tプロジェクト」を開始した。このプロジェクトのコンセプトは、
1.シロイヌナズナのキメラリプレッサーコンストラクトを可能な限りそのまま異種植物に適用するなど、ベクター構築や組換え体作出等の繁雑な作業を軽減する
2.多数種の花きを材料とする集中的な新規形質導入を通じて、転写因子抑制効果の期待値、植物種間差など新たな植物種に本法を適用する際に必要な情報のほか、研究材料や育種素材を多数提供する
の2点である。得られた表現型のデータは、シロイヌナズナの既存の情報等と使いやすい形でリンクしたデータベースとして公開する予定である。CRES-T法を植物形質改変へ利用する際のアプローチの仕方、従来法との使い分けなどについて、最新のデータを紹介しつつ考察する。
なお、本プロジェクトは、農林水産省の競争的資金「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」によるものである。