抄録
ペチュニアのクラスCホメオティック遺伝子pMADS3は雄ずいおよび雌ずいに特異的に発現している。pMADS3ゲノムDNA断片をペチュニアに再導入すると、pMADS3サイレンシング系統に加え、数系統において内在性pMADS3が花弁およびがく片、茎葉にエクトピック発現(ect-pMADS3)することが見出され、新奇なエピジェネティック転写制御であると考えられた(Kapoor et al., Plant J. 43:649-661, 2005)。ect-pMADS3表現型の発現には、pMADS3の組織特異的発現に必要なイントロン2(4 kb)が導入遺伝子に含まれることが必須であった。また、導入遺伝子が分離して失われた後代にもect-pMADS3表現型が表れること、相同pMADS3座が個別に制御されていること、形質がパラミューテーション様に遺伝することなど、エピジェネティック制御に特有の性質が認められた。欠失実験等により、ect-pMADS3表現型発現に関与する領域がpMADS3イントロン2中の1 kbの範囲(領域II)に特定された。また、ect-pMADS3を示す系統では、内在性pMADS3イントロン2の領域II中のDNA配列がメチル化されていることがわかり、pMADS3のエクトピック転写活性化との関連が示唆された。これらの結果から、pMADS3の組織特異的転写制御に関し、通常の転写制御とエピジェネティック制御との関係について考察する。