日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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概日リズムホルモン・メラトニンの合成制御機構
*坪井 誠二
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p. S080

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抄録

時間情報ホルモンであるメラトニンは松果体においてセロトニンから生合成される。セロトニンN-アセチル転移酵素(NAT)は律速酵素であり,その活性制御を通じてメラトニン合成が制御されている。NAT 活性は、cAMP を介する遺伝子レベル及びタンパク質レベルで制御されていることが明らかとなっている。しかし、実際の生理現象は複雑であり、cAMP を介する制御だけでは説明するのは困難である。以前より、NAT は SH 基修飾試薬である N-Ethylmaleimide (NEM) の添加により失活することから,NAT の活性化に SH 基の関与が示唆されていた。まず、我々は,NATのシステイン残基に注目し、NAT活性に重要なシステイン残基の同定を試みた。酸化型グルタチオン及び溶存酸素により酸化した場合 NATは失活したが,DTT または還元型グルタチオンの処理により活性は回復した。 [14C]-NEM の取り込み,及び部位特異的変異導入 NAT を用いた実験より,61及び177番目のシステインが活性に重要であることが明らかとなった。更に,このシステイン間の-SH/-S-S- 結合の変換が NAT 活性を調節していることを見出した。これらの結果より,NAT には還元型(-SH,活性型)と酸化型(-S-S-,不活性型)が存在し,これは Cys 61 と Cys 177 の間で -SH/-S-S- 結合の変換によって引き起こされており,この変換にグルタチオンが関与していることが明らかとなった。

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© 2006 日本植物生理学会
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