抄録
ビール原料や家畜の飼料として重要な穀物であるオオムギには,農業的に有用な遺伝情報が蓄積されている.また,単子葉類植物の中でイネと並んで自殖性二倍体のオオムギは遺伝学的研究が進んでいる.岡山大学資源生物科学研究所のオオムギリソースセンターでは,世界各地から収集したオオムギの在来品種や突然変異系統・同質遺伝子系統など約1万系統を保存し,そのうち約6千系統をデータベース化して内外の研究者に提供している.一方で,オオムギのゲノムサイズは約5,000Mbpと大きいため,これまでのところ42万におよぶESTを中心としたゲノム解析が進められてきた.これらのEST情報は国際コンソシアムによってGeneChipシステムが開発されるなど有効に活用されている.岡山大学では約12万クローンのcDNAを保存し,配列をデータベースに公開すると共に,完全長cDNAの作製を進めている.また,我が国のオオムギ品種に由来するBACライブラリー(6x,30万クローン)を作製して,高密度フィルター,プールDNAなどを作製して保存,提供している.一方,オオムギの形質転換は未だ容易でなく,タグラインやRNAi等の利用も難しいので,TILLINGを用いた実験系の開発を進めている.このようなゲノムリソースを利用して保存系統を管理し,有効に利用することはオオムギの多様性を捉える上で重要である.