抄録
イネゲノム全配列が決定され、機能ゲノム研究のための種々の遺伝系統の整備も進んでいる。一方大学等では長年に亘り野生イネ系統群、染色体置換系統群、高頻度ミュータント集団など独自の系統群を収集、開発しており、今後のイネゲノム機能解析、進化、育種などの研究に不可欠の貴重な素材を持っている。これらの遺伝資源は、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)により、系統整備と情報公開を進めている。遺伝資源は(1)9ゲノム23種をカバーした3,000系統以上の野生イネ、(2)野生や生態型の異なるイネの染色体断片を導入した栽培イネ1,000系統におよぶ染色体置換系統シリーズなど、および(3)NMU処理突然変異体プール(5,000系統)である。NBRP開始以降に、野生イネはアメリカでのOMAP計画も進んでおり、今後野生イネ系統と染色体置換系統は、野生特異的遺伝子同定や進化・多様性研究にますます重要となってきた。またNMU処理突然変異体プールについては、別プロジェクトにおいてTILLINGによる遺伝子変異の検索を行った結果、高頻度の変異集積集団であることがわかり、全ての遺伝子の変異アレルの検出が可能であると考えられる。この変異系統は、今後の遺伝子機能、発生、生理機能研究のツールの重要な柱のひとつとなろう。NBRPイネリソースの現状と今後についてのトピックスを紹介する。