日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ナショナルバイオリソースプロジェクト「コムギ」 ―複雑系ゲノム解析のモデル植物―
*荻原 保成
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p. S085

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抄録
コムギは世界の最重要穀物である。種・属間の交雑親和性が高いため、近縁なエギロプス属、ライムギ属、オオムギ属などとの雑種が容易に形成される。その特性をいかして人工倍数種や染色体添加/欠失系統などの異数体系統が育成されている。雑種の染色体対合の頻度を指標にしてコムギ・エギロプス属植物のもつ核ゲノムにゲノム記号が与えられている。また、コムギ・エギロプス属すべての種の細胞質とパンコムギの核とを組み合わせた核・細胞質雑種が育成され、細胞質ゲノムの表現型に及ぼす影響を調べるとともに相互の類縁関係が推定されている。このように、近縁な植物間で体系的に核ゲノム、細胞質ゲノムの両者を特徴付けた植物種は他に類例をみない。
コムギ属は倍数化により進化してきたことを特徴とする。各ゲノムのゲノムサイズが大きいため、これまでゲノムサイエンスには必ずしも適していないと考えられていた。しかし、DNAランドマーカーの充実、ESTクローンの蓄積、オリゴDNAマイクロアレイの作成、高分子DNA断片によるゲノムライブラリーの構築(6倍体であるパンコムギと祖先4倍体、2倍体の各ライブラリーが整備されている)により、植物に特徴的な倍数性を解析するモデル植物として期待されている。
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© 2006 日本植物生理学会
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