抄録
道管・仮道管を構成する道管要素は,分化の最終段階で起こる液胞崩壊型のプログラム細胞死を経て中空の死細胞へと分化する.しかしながら,道管要素細胞が自らの液胞をどのようにして崩壊させるかという仕組みについては不明である.私たちは既に,シロイヌナズナ培養細胞 in vitro 分化誘導系において,液胞膜の崩壊及びプログラム細胞死が起きていること,形質転換培養細胞からも道管要素分化を誘導できることを確認している.そこで,分化過程における液胞の動態を明らかにするため, GFP-AtRab75 で液胞膜を可視化したシロイヌナズナ形質転換培養細胞を用いて分化過程における液胞膜の動態を観察したところ,分化が進行するにつれ,液胞の融合が促進され,二次壁の形成が起きている細胞でも活発に液胞膜が運動している様子が観察された.さらに分化が進行すると,液胞膜の動きがいったん停滞し,その後激しく収縮しながら液胞膜が消失していく様子を捉えることに成功した.さらに,このような液胞膜の動態変化を制御する分子機構の解明に向けて,液胞膜の動態を制御すると予想される Rab GTPase に着目して解析を行った結果,液胞膜に局在する3種類のRab GTPase が維管束で機能している可能性があることを見出した.本大会では,現在進めている Rab GTPase の T-DNA 挿入変異体の解析結果を合わせて報告する.