抄録
我々は、膜輸送系の中心に位置しているゴルジ複合体の複雑で動的な構造や機能の詳細を明らかにすることを目的に研究を進めている。これまでの研究から分泌性糖タンパク質α-アミラーゼI-1を過剰発現させたイネ非分泌細胞においてα-アミラーゼI-1がゴルジ複合体を経由してプラスチドに輸送されることが見いだされ、ゴルジ複合体の新たな輸送選別機能が示唆された。本報告においては、α-アミラーゼ糖タンパク質過剰発現細胞におけるゴルジ体膜の構造変化について述べる。ショ糖添加培地で培養したイネα-アミラーゼ過剰発現細胞を電子顕微鏡で観察したところ、ゴルジ複合体の数が野生型細胞に比べ増加する傾向が見られた。続いて、N-acetylglucosaminyltransferase I (GNTI)を指標にα-アミラーゼ過剰発現細胞におけるゴルジ体の膜密度について解析した。ショ糖密度勾配遠心フローティング法を用いてα-アミラーゼ過剰発現細胞および野生型細胞のGNTI結合ゴルジ体膜を分離し解析したところ、α-アミラ-ゼ過剰発現細胞においてGNTI結合ゴルジ体膜が高密度側に大きくシフトすることが見いだされた。この結果は、ゴルジ機能の変化に応答してゴルジ体膜の構成成分が再構築されることを強く示唆している。