日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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みどりの香り生成に脂質加水分解は必ずしも必須でない?
*松井 健二Rasonabe Zinna Marie
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p. 065

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抄録
みどりの香り(GLV)は炭素数6(C6)のアルデヒド、アルコールからなる植物特有の揮発性化合物で、植物組織の破砕に伴い急激に生成される。GLVはリノレン酸など、不飽和脂肪酸のリポキシゲナーゼ(LOX)による酸素添加、引き続く脂肪酸ヒドロペルオキシドリアーゼ(HPL)による開裂反応により生成する。これまで、LOXが遊離脂肪酸を良い基質とすること、植物組織破砕時に急激に脂質が分解されることからGLV生成には脂質加水分解による遊離脂肪酸の生成が必須であると考えられてきた。しかし、我々は脂質加水分解を伴わなくてもGLVが生成される可能性を見いだした。HPL活性を欠失したシロイヌナズナ変異体の葉を破砕し、その後の脂質含量、脂肪酸ヒドルペルオキシド組成を詳細に解析した。HPL欠損変異体ではLOXで生成された遊離の脂肪酸ヒドロペルオキシドが蓄積すると予想されたが、遊離脂肪酸ヒドロペルオキシドの蓄積は見られず、ほとんどがエステル化されたままであった。このことから、シロイヌナズナのGLV生成には脂質のアシル基が加水分解を受けずにLOXにより酸化され、引き続くHPL反応により生成されている可能性が示唆された。一方、LOXを欠損した変異体ダイズでは破砕に伴うGLVの生成時に遊離脂肪酸の蓄積が認められなかった。この結果から、ダイズにおいてもGLVの生成には脂質加水分解が必須でない可能性が示唆された。
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© 2007 日本植物生理学会
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