日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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キサンチン脱水素酵素の発現抑制は植物の生育・稔性・セネッセンスに影響を及ぼす
*中川 彩美高橋 美佐森川 弘道坂本 敦
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p. 089

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抄録
キサンチン脱水素酵素 (XDH) はプリン化合物の異化代謝を担う普遍的な古典的酵素であるが,その生理的役割は必ずしもよく理解されていない。本酵素はプリン異化反応の副産物としてスーパーオキシドを発生するが,近年,亜硝酸を還元して一酸化窒素を生成する活性も示唆されており,活性酸素や活性窒素の生成の観点からも,その機能と植物生理との関わりに興味がもたれる。そこで本研究では,RNA干渉法によりXDH遺伝子を発現抑制した形質転換シロイヌナズナ (xdh) を作出し,植物個体レベルにおけるXDH機能の検証を行った。
野生株では植物全体に分布し,特に根と成熟葉で強く見られるXDHの発現が,xdh 植物では著しく抑制されていた。xdh 植物は実生の生育遅延や,果実あたりの種子数と乾重量の減少,不稔果実の増加などの表現型を呈したが,XDH阻害剤であるアロプリノールで処理した野生株でも同様の表現型が観察された。さらに,xdh 植物では成熟葉のクロロフィル含量が減少する一方で,細胞質型グルタミン合成酵素や SAG12,SAG13 などのセネッセンス関連タンパク質・遺伝子の発現が活性化されていた。これらの結果から,XDHは栄養期と生殖期を通じて植物の成長に重要な役割を持ち,セネッセンスの抑制に関与することが示唆された。
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© 2007 日本植物生理学会
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