日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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鉄欠乏誘導性bHLH型転写因子OsIRO2は鉄吸収に関わる遺伝子を制御する
*小郷 裕子板井 玲子中西 啓仁小林 高範高橋 美智子森 敏西澤 直子
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p. 109

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抄録
イネ科植物は三価鉄のキレーターであるムギネ酸類(MAs)により、根圏から鉄を吸収する。MAs合成系の遺伝子群を含め、イネ科植物の鉄欠乏誘導性遺伝子の多くには、上流に鉄欠乏応答性シスエレメントIDE1、IDE2が存在する。鉄欠乏誘導性bHLH型転写因子OsIRO2は、IDEs結合性ではないが、鉄欠乏応答における遺伝子の発現制御機構の一端を担うことを我々は報告してきた (Ogo et al., J. Exp. Bot. 2006)。本発表では、形質転換イネを用いた機能解析について報告する。OsIRO2過剰発現イネは、ムギネ酸類の分泌量が増加し、クロロシスになりにくかった。一方、RNAi法によるOsIRO2の発現抑制イネは、ムギネ酸類の分泌量が少なく、クロロシスになりやすかった。発現抑制イネを用いたマイクロアレイ解析により、ニコチアナミン合成酵素、Fe(III)-MAsトランスポーターOsYSL15等の発現が、OsIRO2の発現抑制に伴い減少することが確認された。また、複数の鉄欠乏誘導性転写因子もOsIRO2の発現抑制によって発現量が減少し、これらにはOsIRO2のDNA結合配列を上流に持つものもあった。OsIRO2は上流にIDEsに相同性の高い配列を持つ。これらのことから、鉄欠乏時においてIDEs結合性転写因子→OsIRO2→その下流の転写因子という遺伝子発現制御ネットワークが考えられる。
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© 2007 日本植物生理学会
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