抄録
植物は病原体感染時に多くの遺伝子発現を変化させ、防御応答を行う。病原細菌 Pseudomonas syringae pv. tomato DC3000 (Pst DC3000) の hrcC 変異体はタイプIII分泌機構に変異を持ち、タイプIIIエフェクターを植物細胞に導入することができない。従って、 hrcC 変異体の感染によって誘導される植物の大部分の防御応答は、 pathogen-associated molecular patterns (PAMPs) の認識によって起こると考えられる。植物はタイプIIIエフェクターを認識し、サリチル酸を介した防御応答を誘導することが知られている。しかし、 PAMPs がサリチル酸を介した防御応答を誘導するかどうかについてはわかっていない。そこで我々は、 Pst DC3000 hrcC 接種後、いくつかのシロイヌナズナ防御関連遺伝子の変異体の遺伝子発現プロファイルを、カスタムマイクロアレイを用いて解析した。その結果、 Pst DC3000 hrcC によって誘導されるいくつかの遺伝子は、病原体感染時のSA合成に必須である ICS1 遺伝子依存的であることがわかった。この結果は、PAMPsによってサリチル酸を介した防御応答が誘導されることを強く示唆している。また、その他の変異体における遺伝子発現プロファイル解析も紹介し、シロイヌナズナの基礎抵抗性メカニズムについて考察する。