抄録
植物の生理的な機能を基盤とした工業原料等の有用物質の生産を可能とする為に、植物の物質生産プロセスを解明することが必要とされている。セルロースを主成分とする細胞壁は、工業原料としての利用価値が高い反面、非常に多くの酵素が関与する複雑なプロセスで形成されており未知の部分が多い。それを解明する為の手法として、公開されているシロイヌナズナのマイクロアレイデータを基にした遺伝子共発現相関解析を用い、細胞壁形成に関わると推測される遺伝子の選抜を行ったことを前回の年会において報告した。今回は、それらの遺伝子が実際に細胞壁の形成に関与しているのかどうかを実験的に証明することを試みた。
候補とした遺伝子に関して、シロイヌナズナ培養細胞T87を使い過剰発現体を作製した。それらの中で二次壁をターゲットとした転写因子において、フーリエ変換赤外分光光度計で糖成分と考えられるスペクトルで変化が見られた。また、一次壁をターゲットとした別の転写因子のRNAiを、一次壁ということから致死になる可能性を考慮しグルココルチコイド誘導型ベクターを用いて行ったところ、デキサメタゾン処理により致死になる表現型が観察された。これらの転写因子を中心に、マイクロアレイ解析やガスクロマトグラフィー-質量分析機などを利用したメタボロミクス解析に関しても併せて報告する。