日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ヒメツリガネゴケのリプログラミング過程における細胞周期関連遺伝子の発現変動の解析
*石川 雅樹小栗 康子小原 真理若月 幸子長谷部 光泰久保 稔
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p. 281

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抄録
コケ植物セン類に属するヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)は、単細胞である胞子から発芽後、細胞が一列に並んだ原糸体を形成する。その後、原糸体から芽と呼ばれる細胞塊を経て、茎葉体へと発生していく。茎葉体は、茎と葉のような構造をした茎葉から構成されている。茎葉を茎葉体から切り離すと、約24時間目以降で切断面に面した葉細胞が分化全能性幹細胞へと分化転換し、原糸体頂端細胞になる。このようにヒメツリガネゴケは被子植物に比べて高い分化全能性を持っているが、その仕組みは不明である。本研究では、この分化転換の過程(リプログラミング)を細胞周期の観点から解析することを試みている。今回我々は、ヒメツリガネゴケのゲノム配列とEST情報をもとに、サイクリンやサイクリン依存性キナーゼなどの細胞周期関連遺伝子を単離した。その後、リプログラミング過程における細胞周期関連遺伝子の発現変動をリアルタイム RT-PCRを用いて調べた。その結果、茎葉切断後12時間目でサイクリンD(CYCD)転写産物が蓄積し始め、さらに茎葉切断後36時間以降で、サイクリンB転写産物の蓄積量が上昇することが分かった。以上のことから、ヒメツリガネゴケのリプログラミングの過程でCYCDの発現が上昇し、それにより細胞周期が動き出すという可能性が考えられる。
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© 2007 日本植物生理学会
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