抄録
咲き分けや絞り模様を生じるアサガオ(Ipomoea nil)の易変性変異体の多くはEn/Spm類縁トランスポゾン、Tpn1(Transposable element of Pharbitis nil one)ファミリーの転移によって生じていることがわかっている。これまで同定されたTpnはいずれも非自律性因子であり、自律性因子がコードする転移酵素(トランスポゼース)遺伝子を利用し転移している。これまでの研究において、既に同定されているEn/Spmスーパーファミリーの転移酵素遺伝子をもとに自律性由来と考えられるTpnの複数の転写産物を単離し、それらから推定される転移酵素TNPδとTNPαを決定した。このTNPδのアミノ酸配列は他の植物で同定されているEn/Spm類縁因子の転移酵素であるTNPD(またはTNP2)と比較すると、それらと共通するトランスポゼースドメインを保存していた。一方、TNPαは既知の自律性因子由来のTNPA(またはTNP1)との相同性を示さないかわりに、C末側にシステインプロテアーゼ様の活性ドメインをもつことが示唆された。このドメインはイネのRim2/HIPA因子やMedicagoに存在するEn/Spm類縁因子にも存在することから、Tpn1ファミリーを含むこれらのトランスポゾンがトウモロコシのEn/Spmとは異なるサブグループに属することを示唆する。