抄録
フラビンを発色団として持つBLUFタンパク質は、多くの微生物の光障害応答に関与する青色光受容体である。その光反応は、他の青色光受容体(フォトトロピンまたはクリプトクロム)のそれとは異なる特異な機構で行われている。現在までの研究から、BLUFタンパク質に光を照射すると、フラビンと近傍のアミノ酸側鎖との水素結合ネットワークが変化し、それが光シグナル状態を形成する上で重要であることがわかった。この水素結合ネットワークの変化に引き続き特定のβシートの構造変化が引き起こされ、最終的に光情報が下流の因子へ伝達されると考えられている。今回我々は、光情報をタンパク質構造へ変換する機構の詳細を明らかにする目的で、紅色細菌のBLUFタンパク質AppAを用いて、光依存的なβシートの構造変化が分光学的に観測されないW104A変異体の生化学的解析と、その変異をゲノムに持つ変異株の表現型を調べた。その結果、W104A変異AppAタンパク質は、光依存的な活性の変動を示さないことがわかった。また変異株の表現型からW104A変異体はシグナリング状態(Light state)に固定されていると考えられた。得られた結果と近年明らかとなった数種のBLUFタンパク質の結晶構造を元に、その光反応のメカニズムを議論する。