抄録
Cd汚染土壌のファイトレメディエーションには、植物がCdに応答する機構の幅広い理解が必要である。そのため演者らは培地上にCdの濃度勾配を形成させたCd濃度勾配培地を用いてCdへの応答が変化したシロイヌナズナ変異株を単離し、解析を行ってきた(第47回大会)。得られた変異株のうちWTに比べ強いCd耐性を示す変異株、T-32株は一つの不完全優性変異をもち、生育速度の低下や葉の形態の変化も同時に観察された。また、この変異株は高濃度のNiにも耐性を示したが、ZnについてはWTと同程度の耐性しかもたなかった。生育開始後3週間目の植物体の根を30μMのCd溶液で24時間処理し、植物体のCd濃度を測定した実験では、T-32株は乾物重あたりでWTの約2.5倍量のCdを蓄積していることが明らかになった。このことからT-32変異株の原因遺伝子を解明することで、ファイトレメディエーションの実用化に役立つ有用な知見が得られるものと期待された。現在、この変異の染色体上の座上位置を特定するための実験を行っている。