抄録
我々は、O. brevisの重金属イオン輸送体であるbxa1遺伝子を単離同定してきた。Bxa1はCPx-ATPaseであり、Ag, Cu, Cd, Znを輸送可能な蛋白質である。このbxa1遺伝子について、酵母形質転換体を用いて重金属ストレスに対する以下の機能解析を行った。
bxa1導入株はベクターpYES2導入株(コントロール株)に比べ、液体・固形の両培地でCdにのみ感受性になり、bxa1を過剰発現させるとCdストレスの有無に関係なく生育が著しく阻害された。Bxa1とGFPの融合遺伝子を用いた酵母細胞内局在性試験から、Bxa1が主にEndoplasmic reticulum(ER)膜に局在することも明らかとなった。また、Bxa1導入株の走査型電子顕微鏡(SEM)の観察結果では、細胞サイズが小さくなり細胞の形状が通常の卵形から球形に変化したものが増加することを明らかにした。さらにCd処理細胞を同様にSEM観察したところ、Bxa1導入株では球形の細胞の出現頻度がコントロール株よりもさらに高くなることが明らかとなった。このことから、Bxa1は蛋白質合成の重要な場所であるERに局在化し、蛋白質の合成に何らかの影響を与え細胞増殖阻害や細胞形態変化を起こしていることが示唆された。現在、細胞内部の変化についても透過型電子顕微鏡(TEM)での観察を進めている。