抄録
植物の栄養吸収においてトランスポーターは中心的な役割を果たすが、トランスポーターをコードする遺伝子の発現制御に関する研究は立ち遅れている。本研究では、転写因子の遺伝子破壊株を収集し、トランスポーターをコードする遺伝子の発現量を指標として発現制御に関わる因子を迅速に同定する手法を確立した。
シロイヌナズナでは1968遺伝子が転写因子をコードすると推定されている(RARTF: http://rarge.gsc.riken.jp/rartf/)。これらのうち約20パーセントは理研トランスポゾンタグラインコレクションにより破壊株を揃えることが可能である。今回の解析では265遺伝子の転写因子の破壊株のホモ系統を確立し、スクリーニングの対象とした。硫黄同化で主要な役割を担う硫酸イオントランスポーターSULTR1;2の硫黄欠乏による発現誘導、窒素同化で主要な役割を担う硝酸イオントランスポーターNRT2;1の糖欠乏による発現抑制をリアルタイムPCRにより定量的に解析し、野生型株とは異なる発現パターンを示す変異候補株を遺伝子破壊株コレクションの中から複数系統分離することに成功した。