抄録
マメ科モデル植物であるミヤコグサは、根粒菌との共生窒素固定制御機構の研究に広く用いられている。以前我々は、ミヤコグサ内在の転移活性を持つTy3-gypsy型レトロトランスポゾンLORE1を見いだし、現在その遺伝子タギングへの応用に向け研究を行っている。今回新たにLORE2 (Lotus Retrotransposon 2)を同定したので報告する。
デンマークのオーフス大において作成されたAc/Dsタギング集団から見いだされた2つの独立の共生変異体において、それぞれの原因遺伝子にTy3-gypsy型レトロトランスポゾンの挿入が見られた。両挿入断片は互いに高い相同性を示し、LORE1とは配列が明らかに異なることからLORE2と名付けられた。LORE2のエコタイプGifuにおけるコピー数は約20と推定され、また上述の共生変異体においてはコピー数の増加が見られた。
調査した全ての組織とカルスにおいてLORE2の転写産物が検出されたが、転写量は低かった。またカルスにおける明らかな転写活性の上昇は見られなかった。これらの事と、2つの共生変異体が選抜された過程から、LORE2はカルスではなく、植物体組織において転移したと推測された。現在LORE2の転写/転移誘導条件を探索しており、LORE1と同様に分子遺伝学的利用を試みている。