抄録
光化学系 I 複合体(PSI)は14のサブユニットから構成され、集光性クロロフィルタンパク質複合体(LHCI)が結合してPSI-LHCI超分子複合体を形成する。高等植物の超分子複合体には4つのLHCIが存在するが、緑藻クラミドモナスには9種のLHCIが検出され、より大きなアンテナ複合体が機能している。PSI-LHCI超分子複合体は多数の構成成分が段階的に分子集合すると考えられるが、その生化学的な実態は明らかではなかった。2005年度の植物学会で、我々はクラミドモナスのPSI-LHCI超分子複合体の分子集合中間体をタンパク質のパルス・チェイスラベル法などを利用して同定した。今回はPSIサブユニットに対する抗体を利用して分子集合中間体の解析をさらに進めたので報告する。ウェスタン分析により分子集合中間体にはPsaGとPsaKが存在しないことが分かった。その結果、LHCIは、PSIとの結合が弱くなり、チラコイド膜を温和に可溶化する過程で遊離すると結論した。一方、PsaFは反応中心とLHCIに挟まれた部位に存在し、LHCIが遊離した結果、結合が弱まり精製の過程で失われることが示された。したがって、緑藻クラミドモナスでは分子集合の最終段階でPsaGとPsaKが結合し、構造的にも安定なPSI-LHCI超分子複合体が形成されるであろうと結論した。